はじまりは水曜日

この日から3日間,浦和の事業所に出向することになってました.
普段より2時間早く起床して,
田園都市線埼京線を乗り継いで出社.
普通に行けば,片道1時間半弱なんですけど,
田園都市線とかがアリエナイほど混みまくってて,
その中に数分いると,気分が悪くなるので,
途中下車しては体調を整えて再出発,ってのを繰り返すと
浦和までは,やっぱり2時間はかかってしまうのです.


業務内容は,事業所内に溜め込んだ設計図面の電子ファイル化.
要は,PC上で簡単に図面の検索ができるように,
現状ではファイルに閉じて本棚に整理してある図面を
スキャナーで取り込んで,PDF形式でサーバに保存する作業です.
あと,図面ファイル保管場所が手狭になってて,
取り込んだものから随時処分したいっていうのもあったみたいです.
実際,その図面ファイルの量というのが,準天文学的な量.
僕が2ヶ月フル回転しても終わらない量でした.


まぁ,自分は3日間だけ依頼されたわけだし,
こんな,やってて眠くなるような単純作業でも
手を抜いてやるわけにもいかないので,
ひとり黙々とスキャナってました.
あと,普段自分が無駄に設計の仕事に関わってるぶん,
スキャナる図面上で間違ってる表現とかがあったら
もう気になって気になって仕方なくなってしまい,
その図面を作成した人に直接,
「ココ間違ってると思うんですけど,
 このままスキャナっていいんですか?」
と聞きに行ったりするとか,
なんか自分で勝手に忙しくなってました.
おかげで,その人からは,
「いや〜上腕君,ウチの部署に来なよ〜」などと
無駄に賞賛されてしまいました.いいっすよ,そんな社交辞令.


で,その日の業務が終わって,横浜の上司様に電話で連絡.
すべては,ここから始まったのでした.


トゥルルルル,トゥルルルル
「もしもし?」
「あ,もしもし?上司様ですか?上腕ですー」
「おう,お疲れさん」
「先程,浦和での作業が終わったので報告します.
 ずっと図面をスキャナするだけの作業で,退屈してましたよ」
「そうか,ご苦労さんやな」(注:上司様は関西出身)
「コレをあと2日間やると思うと,ちょっとしんどいですねぇ.
 はやく普段の横浜でのクリエイティブな仕事に戻りたいっすよー」
「そ,そうやな・・・」


「あ,なんかそっちで変わったことありましたか?」
「変わったことか.・・・・・・大有りや」
「どうしたんですか?また,○○社からのクレームがきたとかっすか?
 カンベンしてくださいよー,あんなの対応しきれないっすよー」
「いや,そーゆーことと違う」
「あ?そうなんですか?何か新しく問題発生ですか?」
「おう.さっき取締役から連絡があって,
 ・・・上腕の異動が,正式に決定した」
「・・・・・・はい?」
「上腕,お前,4月から浦和や」
「・・・・・・ハ,ハハハ・・・・・・」
「・・・なんやお前,嬉しそうやな」
「いや,嬉しくはないんですけど,突然のことで,
 ちょっと笑うしかない状況だったもので・・・」
「そうか」
「え,えーと,とりあえず,
 明日も浦和なんで,このまま直帰して,えーと,
 はい,お疲れ様です」
「おう,お疲れさん」


トゥルルルル,トゥルルルル
「もしもし?」
「もしもし?上司様ですか?上腕です.
 度々の電話,申し訳ありません」
「おう,お疲れさん」
「あの,先程の件なんですけど,
 なんか周囲の人に『異動が決定した』って言ったら,
 『お前,それヤバイよ!』って散々言われまして,
 その,ちょっと話を聞きたいんで,
 明日横浜に行って,ちょっと話を聞いてもいいですかね?
 こちらの人には,一応了承はとってもらったんで」
「おう,じゃあ明日の朝やな.取締役にも,連絡しとくよ」
「あ,あと,もうひとついいですか?」
「おう,なんや?」
「えーと,その,・・・マジですか?」
「マジや」
「・・・はい,わかりました.お疲れ様です」
「おう,お疲れさん」